HPVワクチンの認可が近づいています!
「HPVワクチンの認可が近づいています!」
弘前女性クリニック 蓮尾 豊
HIVがエイズの原因ウイルスであることを知らない方はいないでしょうね。それではHPVというウイルスを知っている方はどれほどいるでしょうか。今回はHPVに関して解説しましょう。
1.子宮頸がんはHPV感染が原因です
子宮がんには子宮の入り口に発生する子宮頸がんと、子宮の奥に発生する子宮体がんがあります。この二つのがんは発生原因も好発年齢も、検査の方法も大きく違います。子宮体がんは女性ホルモンの関与が大きいと考えられていますが、子宮頸がんは性行為によりヒトパピローマウイルス(以下HPVと略す)が感染することにより発生することがわかっています。性行為により感染することから、最近若い女性の子宮頸がんが増加しており、20代では乳がんの3倍の罹患率なのです。
2.HPVとは
HPVというウイルスは1種類だけではありません。現在100種類以上のタイプが確認されています。このすべてのタイプが子宮頸がんの原因となるわけではありません。最も子宮頸がんの原因となりやすいものを「高リスク型」と呼んでいますが、この代表が16型、18型です。これ以外に31,33,35,51,52型なども高リスク型です。これに対して、6,11,42,43,44型などは低リスク型と呼ばれ癌が発生することはまずありませんが、6型と11型は尖圭コンジローマという性感染症の原因ウイルスです。
3.HPVの感染の状況や感染後の経過
HPVは性行為により感染することから、世界中に広く蔓延しています。セックスの経験が一度でもある女性の60~80%が生涯で一度は感染を受けると言われています。しかしHIVなどと違って、感染を受けた女性のほとんどは体の免疫的な働きによって1年以内にHPVは消失するのです。HPV感染を受けた女性の10%前後が持続的な感染となりますが、そのすべての女性が子宮頸がんになるわけではありません。先述した高リスク型のウイルスの感染を受けた女性の中の一部の方に細胞変化(異形性)を起こり、さらにこの中の一部の女性が子宮頸がんに移行します。HPV感染を受けてからがんになるまでには短くて数年、多くは10年前後の期間を必要とします。この間はHPV感染を受けていても出血などの症状はありません。
4.HPVワクチン
HPV感染を予防するワクチンが開発され、日本を除く世界中の多くの国(100ヵ国以上)で既に接種が行われています。日本でも数年前からHPVワクチンの治験が開始され、私もこの治験に参加し、20歳から25歳までの女性160名に協力していただきました。第1段階の治験は終了し、今は認可待ちの状況ですが、少子化問題の対策としても注目され、早ければ年内にも認可される可能性が出てきました。しかし、産婦人科臨床医としては、ワクチンが使用できるようになっても子宮頸がんの問題がすべて解決するとは考えていません。HPVワクチン認可後の問題点などに関しては次回解説いたします。
HIVがエイズの原因ウイルスであることを知らない方はいないでしょうね。それではHPVというウイルスを知っている方はどれほどいるでしょうか。今回はHPVに関して解説しましょう。
1.子宮頸がんはHPV感染が原因です
子宮がんには子宮の入り口に発生する子宮頸がんと、子宮の奥に発生する子宮体がんがあります。この二つのがんは発生原因も好発年齢も、検査の方法も大きく違います。子宮体がんは女性ホルモンの関与が大きいと考えられていますが、子宮頸がんは性行為によりヒトパピローマウイルス(以下HPVと略す)が感染することにより発生することがわかっています。性行為により感染することから、最近若い女性の子宮頸がんが増加しており、20代では乳がんの3倍の罹患率なのです。
2.HPVとは
HPVというウイルスは1種類だけではありません。現在100種類以上のタイプが確認されています。このすべてのタイプが子宮頸がんの原因となるわけではありません。最も子宮頸がんの原因となりやすいものを「高リスク型」と呼んでいますが、この代表が16型、18型です。これ以外に31,33,35,51,52型なども高リスク型です。これに対して、6,11,42,43,44型などは低リスク型と呼ばれ癌が発生することはまずありませんが、6型と11型は尖圭コンジローマという性感染症の原因ウイルスです。
3.HPVの感染の状況や感染後の経過
HPVは性行為により感染することから、世界中に広く蔓延しています。セックスの経験が一度でもある女性の60~80%が生涯で一度は感染を受けると言われています。しかしHIVなどと違って、感染を受けた女性のほとんどは体の免疫的な働きによって1年以内にHPVは消失するのです。HPV感染を受けた女性の10%前後が持続的な感染となりますが、そのすべての女性が子宮頸がんになるわけではありません。先述した高リスク型のウイルスの感染を受けた女性の中の一部の方に細胞変化(異形性)を起こり、さらにこの中の一部の女性が子宮頸がんに移行します。HPV感染を受けてからがんになるまでには短くて数年、多くは10年前後の期間を必要とします。この間はHPV感染を受けていても出血などの症状はありません。
4.HPVワクチン
HPV感染を予防するワクチンが開発され、日本を除く世界中の多くの国(100ヵ国以上)で既に接種が行われています。日本でも数年前からHPVワクチンの治験が開始され、私もこの治験に参加し、20歳から25歳までの女性160名に協力していただきました。第1段階の治験は終了し、今は認可待ちの状況ですが、少子化問題の対策としても注目され、早ければ年内にも認可される可能性が出てきました。しかし、産婦人科臨床医としては、ワクチンが使用できるようになっても子宮頸がんの問題がすべて解決するとは考えていません。HPVワクチン認可後の問題点などに関しては次回解説いたします。