保健師の視点から~思春期健康教室~

 
保健師の視点から~思春期健康教室~

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青森市保健所健康づくり推進課では、市民のみなさんの健康づくりのお手伝いをしています。その中で、母子保健に関わる主な業務として、母子健康手帳の交付、乳幼児の健康診査、新生児訪問、マタニティセミナー、思春期健康教室などを行っています。
右図は、青森市の10代の妊娠届出数のグラフです(青森市調べ)。16~18歳の妊娠届出数は平成17年度以降減少しています。しかし、15歳以下の妊娠届出数をみると、平成17・18年度は0件でしたが、平成19年度から再び増加しています。10代の妊娠・出産は、経済的にも大変なため、周囲の人の協力が必要です。また、出産や育児は、人生を大きく変えてしまうかもしれません。
このようなことから、「思春期の子どもたちが正しい知識を得て自分の健康を守れるようになること」、「保護者が思春期についての知識を身につけ、家庭における教育力を高められるようにすること」を目的に、主に小中学生を対象に学校と協力しながら「思春期健康教室」を実施しています。また、年1回開催している「思春期保健シンポジウム」では、保健・医療・教育・福祉等の関係者や保護者などが集まり様々な意見を出し合うことで、思春期教育の重要性への理解を深め、ネットワークを構築することを目指しています。

 私たち保健師が行っている思春期健康教室の内容を簡単に紹介します。小学校ではペープサートなどの教材を用いた学習(体の変化、月経、射精、命の始まり、たばこの害など)や、赤ちゃん人形を使っての体験学習などを行っており、子どもたちに、「一人一人の命はかけがえのないものだ」というメッセージを伝えています。赤ちゃんの人形を抱っこした時、子どもたちは「自分達もこんなに小さかったんだ」と驚きます。中には「(実際の赤ちゃんと同じ重さの)人形を抱いてみて、この重さは命の重さなんだと思った」と言ってくれた子もいます。
中学校では、「ウォークスタディ」という形式で、「体」(男女の体の仕組みについて)、「脳」(本能と理性について)、「心」(自己決定権について&愛とは何か?)、「性感染症」(病態と予防法)の4つのエリアを生徒が移動して学習します。「心」のエリアでは、「愛する人にしてあげたいこと」を先生と生徒みんなに書いてもらっていますが、「料理をつくってあげたい」「いつも一緒にいてあげたい」「相手のことを思いやってあげたい」・・・などなど、様々な意見がでてきて、ほほえましいです。

 中学生には、命の大切さはもちろんのこと、性についての正しい知識を得ることで、自分にとって正しい行動は何なのかを自分で考え、実行できるようになってほしいと考えています。また、嫌なときは「NO」と言える、強い気持ちを持ってもらいたいと講義の中でも伝えています。思春期はとても不安定な時期ですが、自己肯定感が高まることで、自分に自信をもって行動できるようになると思います。ちょっと古いフレーズですが、「みんなは一人一人オンリーワンの存在である」ということを伝えて、思春期健康教室の締めくくりとしています。
 ただ知識を伝えるだけではなく、児童・生徒・先生・保護者のみなさんのこころに残るような思春期健康教室をこれからも目指していきたいと思います。